
パーソルグループは、将来世代を重要なステークホルダーと位置づけ、対話を強化する「FR(Future Generations Relations)活動」を推進しています。その中の一環として2023年より、全国の小学校・中学校に無償でキャリア教育プログラム「“はたらく”を考えるワークショップ(※1)」を提供。パーソルグループの課外活動「みんなの部活(※2)」中の一つ、「キャリア教育ラボ(※3)」の所属メンバーなどが有志で講師をしています。
そんなFR活動に積極的に携わる「キャリア教育ラボ」のメンバー(有志12人)が、3月20日から22日まで2泊3日の合宿を行いました。目的は、非日常の中に身を置き、異なる環境で生きる他者との対話を通して内省を深め、新たな1歩を踏み出すこと。そこで、通常の経済の仕組みとは異なり、お金や物々交換を前提とせず、見返りを求めない贈与経済と市場経済が併存する、広島県呉市の大崎下島にある「久比」という小さな村にある「まめなコモンズ」を合宿所に決定。本記事では、合宿での様子をご紹介します。
*以下、株式会社は省略
●「まめなコモンズ」とは
まめなコモンズは、一人ひとりの「やりたいこと」や得意なことが、地域の暮らしやコミュニティに活かされていく、新しいお金の流れを取り入れた暮らしの実験場です。訪れた人も住まいや食、電気やインターネットなどの暮らしの基盤をみんなで共有し、ともに食べ、語らい、はたらき、それぞれがなんらかの形でまめなコモンズを支えるしくみになっています。訪れれば、地域の日々の営みに身を置きながら自分の在り方を見つめ直す機会が得られます。
合宿の様子
<1日目>
春の穏やかな日差しが降り注ぐ天気の中、合宿はスタート!はじめに、まめなコモンズの代表理事 更科 安春さんとメンバー 福島 大悟さんから、まめなコモンズの成り立ちや考え方、さまざまなプロジェクトについてお話を伺いました。そのあとは福島さんの案内で実際に周辺を歩くツアーへ。地域の自然や歴史を肌で感じて土地の魅力を体感しながら、島内で進められている取り組みに触れ学びを深めました。


島の営みと自分との距離が近づいた1日目の夜に行われたのは、まめなコモンズが主催する2週間滞在の「まめなインターンシップ」を終えた大学1年生、森山 心温さんによる最終プレゼン発表。森山さんは、まめな滞在中、他者から「やりたいことは何か」と幾度となく問われ、自分でも問い直し続けたそう。そして、「自分が今まで考えていた“やりたいこと”は、他者の期待に応えるためのものだったのではないか」という新たな問いが生まれたと言います。そこで自分の思考を停止させる言葉は何かを考え、日々の生活の中でも行える具体的なアクションとして「やばい」「すごい」という言葉を封印。それによる気付きや学びがシェアされました。その発表は、聞いていた参加メンバーらの心に深く響き、「確かに何気なく使ってしまっている言葉だが、自分自身の感受性を鈍くさせることにもつながるのでは」などの声も上がりました。

<2日目>
朝食を終えたあと、午後からのプログラム開始時までは自由時間。そうした中、暖かな陽気に包まれたお昼前、突如、中庭で野点(のだて)が始まりました。きっかけは、たまたまその場で一緒になった滞在者同士の会話の中で出た「こんな良い天気なら、お茶でも点てたいね」の一言だったそう。何気ない“やりたい”の一言から、古民家の倉庫にあった道具などを集めて野点がスタートしたのです。
つぼみをつけた庭木の下に広がる非日常の優雅な時間が、集まった人たちの心をやわらかくほぐしていきました。

午後からはFR推進活動における共創パートナーである、一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム(以下、CPF) 代表理事の岩本 悠さんと、一般社団法人まなびのみなと 代表理事の取釜 宏行さんをお迎えし、「意志ある若者の育成を通した、自己決定できる将来世代の輩出」をテーマにディスカッションを実施。キャリア教育ラボとの共創に向け、中学生向けの進路探求ワークショップや、地方の高校生に向けたキャリア教育ワークショップについて、課題の共有や具体的な実践法の検討を行う対話の時間が設けられました。同テーマは、合宿以前にオンラインでの打ち合わせを通して対話を続けてきたものですが、今回は具体的なアクションを進めていくための場。キャリア教育ラボのメンバーはもちろん、一緒に合宿に参加したメンバーの子どもたち(中学3年生2名)や、一般社団法人まめなの福島さんも含め、それぞれの想いを語り、議論を深めていきます。その熱は冷めることなく夕食時も、そのあとも続き、その結果、何案かを実際に実施へ向けて進めていくことになりました。



そして、夜はカードゲーム対決で白熱。笑い声が絶えない楽しい時間を過ごしました。

<3日目>
朝食後にチェックアウトをし、2泊3日の合宿はこうして終了しました。
滞在中、まめなコモンズには、昼下がりの野点もカードゲームもそうでしたが、誰かに指示されるわけでも、「やるべき」と考えるわけでもなく、「やりたい」という気持ちに導かれるように誰かが行動を起こすと、自然にあちらこちらから人が集まってくる――そんな豊かで優しい時間が流れていました。
まめなコモンズの方々、インターン生、ゲストのお二人と、世代や立場を越えて互いに耳を傾け、想いを交わした時間は、キャリア教育ラボからの参加者にとってだけでなく、その場にいたすべての人にとって、学びのある経験となりました。
合宿を終えて ~参加者の声~
普段の生活から完全に離れ、多様な価値観の人たちと触れ合うことは非常に新鮮で、自己内省の場につながりました。内省し、自分自身が“はたらく”を通して何がやりたくて何を実現したいのかを考える中で、まだ明確な答えまでたどり着けていないですが少しつかめた部分もあり、とても有意義で貴重な機会でした。また、若い世代向けのキャリア教育を考える機会も体験でき、パーソルの枠を超えた取り組みの可能性も大いに感じることができ、非常にワクワクしました。改めて参加して良かったです!!
島の現地の方やCPFの方と、情報に溢れた社会の中でキャリア教育においてどんな情報をどう届けていくべきなのか意見を交わせたことはとても刺激的で、キャリア教育の可能性を改めて実感しました。
また、ゆっくりと時間が流れている自然に囲まれた中で過ごすことで、自分の心の声に耳を傾け、自分自身のキャリアについても向き合うきっかけとなりました。初対面の方が大半の中、参加へ一歩を踏み出して良かったと感じています。
●開催者の想い・展望

兼 パーソルホールディングス グループコミュニケーション本部
FR推進室 木原 ひとみ(キャリア教育ラボ事務局)
「答えのない問いについて、対話したい」というメンバーの一声から始まった今回の合宿。普段の仕事では“やるべきこと”や“やらねばならないこと”からはじまることが往々にあるのですが、キャリア教育ラボでは「WILL」から物事を立ち上げることを大切にしています。まめなコモンズは、そんな私たちの想いと共鳴するように、“やりたいことをやる場所”として実践活動をされています。普段当たり前のように触れている貨幣経済や資本主義とは異なった仕組みの中で暮らしている人々との関わりによって、私たち自身の既存のフレームがゆさぶられ、崩れていく体験ができ、参加者一人ひとりが社会に対してさまざまなことを考える場になりました。CPFとのディスカッションでは、大人も子どもも関係なく、その人から見える視点で言葉を重ね、気付きを得る姿に、まさに私たちが行っている将来世代との対話の本質がそこにあったように思います。
■パーソルのFR活動
パーソルグループでは「はたらくがワクワクする未来」を将来世代との対話のテーマとし、これまでも「未来のはたらく大人たち(将来世代)」に向け、教育やプログラミング教育、仕事の体験機会の提供などを行ってきました。こうした活動をさらに拡大するとともに、2024年度からは対話を重視したキャリア教育プログラムを開発・提供するなど、FR活動を強化しています。
(※1)「“はたらく”を考えるワークショップ」は、自ら主体的に判断しキャリアを形成していくための「生きる力」を養う授業を行っています。2018年のワークショップ開始以来、全国のさまざまな都道府県で、数多くの子どもたちに授業を提供しています。
(※2)「みんなの部活」は、2019年よりグループ横断での取り組みとして開始された、パーソルグループ社員であれば誰でも参加できるコミュニティ。業務以外でのつながりや部署を超えた交流を通して、社員同士のコミュニケーションがより活発になっていくことを目的としています。
(※3)「キャリア教育ラボ」は、現在のキャリア形成や教育に課題感を持っている社員約400名からなる部。「“はたらく”を考えるワークショップ」の講師以外でも、大学でのワークショップや不定期学習会(対話会)などキャリア教育を軸に、部員が取り組みたいイベントなどをさまざま企画·実行をしています。
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
さまざまな事業・サービスを通じて、はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を創造します。